
気候変動の影響を最も受ける「グローバルサウス」の人々と一緒に声をあげたい
山本健太朗
「なぜ、日本では許されないような汚染技術を、バングラデシュに押し付けるのですか?」これは、バングラデシュの活動家、ジャラフ・ハミムさんの言葉です。彼の言葉は、気候変動の時代の不平等を端的に表しています。
私たちは、去年からバングラデシュや世界の人々と一緒に、日本がバングラデシュで建設を進める「マタバリ石炭火力発電」事業を中止に追い込むために活動してきました。
というのも、気候変動の影響を最も受ける国々のひとつ、バングラデシュで、日本の住友商事とJICAが、石炭火力発電所の建設を進めているのです。発電所の1号機と2号機だけでも、稼働すれば、14,000人の命が大気汚染によって奪われるという推計もあります。
私たちは、バングラデシュの同世代のアクティビストたちと、日本を拠点に活動する私たちがどうやって連携をできるのか考えてきました。2021年の9月には、FFF Bangladeshと一緒に住友商事やJICAに公開質問状を提出したり、10月には、住友とJICAに直接抗議に向かったり、そして2022年の1月には、国際オンラインシンポジウムを自分たちの手で開催したり・・・。
そして、ついに私たちと世界の運動の成果として、今年になって住友商事と日本政府は、バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電事業の拡張をおこなわないことを宣言しました。ここまで大きな計画が、一部とはいえ中止になるのは、これまであまりなかったことです。
しかし、課題は残ります。というのも、住友商事と日本政府は、事業の拡張(3号機・4号機)さえ中止にしましたが、すでに建設が進んでいる1号機と2号機については中止するとは言っていません。多くの命を奪うといわれるこの事業をなんとしても、完全中止に追い込みたいです。
そこで今回、私たちは、COPという気候変動対策をめぐる一大国際会議の場で、日本がバングラデシュで行っている「援助」事業が人々の命を奪う問題を訴えにいきたいと思います。
COPの現地では、世界各地から政府関係者や企業関係者が集まり、気候変動対策についてそれぞれの取り組みをアピールします。それと同時に、会場内外では、世界のアクティビストが集まって、より根本的な気候変動対策を求めて声をあげます。これまでのように化石燃料を燃やしてお金儲けをしたい人々と、これ以上犠牲を強いられたくない人々が、生き残りをかけて闘っているのです。
特に、今回のCOPも、前回に引き続き、気候変動の影響を最も受ける「グローバルサウス」の人々が大きな声をあげることになります。なぜなら、彼ら彼女らにとって気候変動は、すでに生き残りに関わる問題だからです。
ことし6月のバングラデシュ・インドの大洪水、6月から8月にかけてのパキスタンの大洪水といったように、気候変動はすでにグローバルサウスで、なかでも子供やお年寄り、女性、マイノリティといった人々に集中し、猛威をふるってきました。パキスタンでは、大洪水の後には、コレラやマラリア、デング熱の拡大、そして経済危機が加わり、さらに多くの人々の生活と命を奪っています。
先月、プエルトリコでは、2017年のハリケーン・マリアによる被害からの復興がいまだに続いているなか、ハリケーン・フィオナが直撃し、被害がもたらされました。
つぎ、どんな大災害がどこで起こるかはわかりません。しかし、次の大災害も、この世界で「弱い存在にさせられている」人々の生活や命を真っ先に奪うでしょう。規模も頻度もこれまで以上のものになるでしょう。
「私たちは、声なき存在ではありません。私たちは声をあげてきたが、無視され続けてきたのです。」これは、気候変動の影響を最もうけるグローバルサウスのアクティビストたちが、口を揃えて言うことです。
グローバルサウスの人々と共に、「気候正義」を求めて一緒に声をあげませんか?お金儲けが人々の生活や命を奪う世界ではなく、今とは全く違う公平な世界を求めて一緒に闘いませんか?化石企業ではなく、普通の人々が力をもつ世界のために一緒に闘いませんか?
山本健太朗
1997年生まれ。Fridays For Future Japan「マイノリティから考える気候正義プロジェクト」代表
Twitter:@ken_y97
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