
声を上げるグローバル・サウスの人々を孤立させない気候変動運動を進めるため、COPへ
ヒル・ダリア・エイミー
「私たちは声なき存在ではありません。声をあげてきたのにもかかわらず、無視され続けてきたのです。」
これまで、気候変動の影響を最も大きく受けるMAPAの人々は、環境破壊を進める企業や政府と闘ってきました。そんななか、声をあげる彼ら彼女らに対して、企業や政府は容赦ない攻撃を仕掛けてきました。
しかし、彼ら彼女らが、弾圧を受けながらも声をあげている時に、私たちグローバルノースの人々は、彼ら彼女らと一緒に闘ってきたのでしょうか?
私は、COP27への参加を通じて、困難な状況であっても声を上げ続けるグローバルサウスの活動家と共に、彼ら彼女らの声が中心の気候正義運動を作っていきたいです。
私は2021年9月にFFF Japan「マイノリティから考える気候正義プロジェクト」に関わり始め、この1年間、マタバリ石炭火力発電事業への抗議運動を、MAPAの活動家と連携しながら進めてきました。
これまで運動を進めてきたなかで見えてきた課題は主に二つあります。一つは、MAPAの活動家とオンラインイベントを開いてスピーチしてもらうこと以上に、MAPAと具体的にどう連帯するかを模索する必要があるという点です。MAPAの活動家の話を聴くにとどまらず、彼ら彼女らと一緒に闘う力になるために、さらなる連帯のあり方を追求したいと考えています。
もう一つは、MAPAの活動家が自国で声を上げることが弾圧の危険を伴う状況で、私たちはどう国際連携しながら運動を進めていけるのかについて、これまでオンラインでMAPAの活動家と関わるだけでは、十分な意見共有がかなわなかったという点です。
グローバル・サウスでは、環境活動家に対して警察や軍隊が頻繁に攻撃を加えています。例えば、2016年にバングラデシュで数千人が中国の資金援助による石炭火力発電所の建設計画に路上で抗議し、警察の発砲で4人が殺されました。
加えて、フランス・トタル社が進めている東アフリカ原油パイプライン(EACOP)は、三井住友フィナンシャルグループが融資を検討していて、完成すれば人類史上最長の原油パイプラインとなります。 2022年10月上旬には、ウガンダで、この事業に反対する学生9人が逮捕されています。(参考:学生9人の解放を求める署名 https://www.stopeacop.net/our-news/petition-for-release-of-9-students-protesting-against-eacop)
日本国内にいて見えてくる範囲の問題意識で、日本国内の問題にのみ焦点を当てて運動を進めるのなら、このような弾圧がある中で闘うMAPAの人々を無視しているのと同じです。それは「気候正義」とはかけ離れたものになりかねない、と私は考えています。
日本では一般的に、気候変動の問題と、グローバルサウスでの暴力が結びつけて語られることはあまりないかもしれません。ですが、グローバルサウスでは、環境破壊や人権侵害をもたらす開発に抵抗する人々に対して、企業と現地の政権が容赦ない攻撃をしてきました。その結果として、気候変動が激化してきたと、私たちは考えます。
ノースの気候変動運動は、MAPAにおける弾圧と、運動を進めるうえでの国際連携という課題に十分に取り組んでこられなかったのではないでしょうか。
そのせいで、サウスの運動が声なき存在にさせられ、気候変動を止める運動の力が弱められたと、私は捉えています。今となっては、気候変動運動はノース中心で進められてきたかのような捉えられ方が主流です。
これらの課題を乗り越えるために、COP現地で、MAPAの活動家や、MAPA中心の気候正義運動を目指すグローバルノースの活動家と交流・議論し、困難な状況で声をあげるMAPAの人々を孤立させない運動を作っていくことを目標としています。