国境を超えたキャンペーン
「なぜ、日本では許されないような汚染技術を、バングラデシュに押し付けるのですか?」これは、バングラデシュの活動家、ジャラフ・ハミムさんの言葉です。
私たちは、2021年のグローバル気候ストライキから、バングラデシュや世界の人々と一緒に、日本がバングラデシュで建設を進めるマタバリ石炭火力発電事業を中止に追い込むために活動してきました。
これまで私たちと世界の運動は、住友商事やJICAに抗議を続け、結果として、マタバリ事業の拡張事業(フェーズ2)の中止を実現してきました。
そして私たちは、すでに建設が始まっている1号機と2号機(フェーズ1)も含め、事業を完全に廃止するよう求めています。
2022年11月には、エジプトでCOP27が開催されます。
年に一回開かれる、気候変動対策をめぐる国際会議、COPでは、今までのように化石燃料を燃やして利益を得たい企業・政府と、今この瞬間に気候危機の被害を被り、自らの生活や命のために気候正義を求める、世界の人々の利害が激しくぶつかり合います。
そして今回、FFF Japan気候正義プロジェクトのメンバー5人が、COP27の開かれる、エジプトに向かうことになりました。そこで、私たちは、COP27の現場から、気候正義を求めて闘う世界の活動家や市民と共に、バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電所の問題を世界に訴えていきます。
住友商事やJICAは、バングラデシュの貧困削減を掲げています。しかし、私たちは利子を払わなければならないのに、どうやって貧困から私たちを救うというのでしょうか。このような重要な問いが無視され続けています。
結局、彼らは私たちを債務の罠にはめようとしているだけなのです。
JICAと住友商事は、化石燃料産業が遅かれ早かれ崩壊することを知っています。だから、産業が崩壊する前に、支援をしている私たちのような国からできるだけ多くの利益を搾り取ろうとしているのです。
日本政府は、新規の石炭火力事業は行わないと言っているが、既に契約したマタバリは例外としています。これは卑怯です。このようなことは今すぐ止めなくてはいけません。
ファルザナ・ファルク=ジュム FFF Bangladesh/FFF MAPAの活動家
現地での被害
現地ではすでに土地収奪や環境破壊が起きています。
マタバリ石炭火力発電事業に付随する、道路の建設によって引き起こされた、漁民の被害についての現地新聞記事(抜粋)です。道路建設の土砂で川が埋め立てられ、近隣の漁民が職を失いました。
2015年のある晴れた朝、漁師のモホン・ジョロダスは、モヘシカリ県マタバリ村のコヘリア川に隣接する自宅近くでダンプカーの轟音に目を覚ました。
なんと、そのトラックは、彼のコミュニティの生計の源である川に土砂を捨て始めたのだ。
このベテラン漁師にとって、全長12kmのこの川が主な収入源であった。彼は、漁業で700~1,000タカを稼いでいて、それは家族4人の生活を維持するのに十分であった。
川の約2kmが完全に飲み込まれた。川岸のマングローブ林も道路のために破壊されたという。
「発電所への道は川を破壊しただけでなく、私たちの生活や希望、未来をも破壊したのです。今、私は日雇い労働で生計を立てています」と、モホンは言った。
さらに彼は、「周辺3村の2,000人以上の漁師が生計を立てられなくなりました。そして彼らの多くは現在、仕事を求めてチャトグラム(チッタゴン)の船舶解体場に移動している」と述べる。
「私たちは、このような心ない行為をやめさせるために人間の鎖になって抗議しました」。
※JICAは、漁民の被害を認めていないため、補償は行われていない。
現地メディア・The Daily Starによる記事からの抜粋
(翻訳・山本健太朗)
マタバリの現地活動家たちは、石炭火力発電所の建設が開始して以来、地域住民の民主的権利は完全に奪い取られてきたと何度も訴えてきた。不法行為に対して声を上げてきた者は、厳しい監視下におかれてきた。
多くの活動家たちは、彼ら彼女らの家族が、地域の「ならず者」たちから性的な暴言を含む脅迫を受けてきたと述べている。というのも、現地のジャーナリストによると、地域のならず者たちは、積極的に声を上げている地域社会の一員を監視しているのだ。
一部の活動家たちに対しては、裏切らせるために膨大な金銭が提示されたこともあった。
さらに抗議行動や行進は、常に警察による暴力に直面している。例えば、2020年の1月に警察は、発電所の建設に反対する現地の人々による行進を妨害した。マタバリの現地活動家たちは、抗議活動は常に不釣り合いに強力な暴力による報復を受けていると訴える。
マタバリでは、地域の協議への参加は制限され、小規模土地所有者や影響を受けた地域住民は協議の日程や場所を知らされていなかった。現地の市民団体やジャーナリスト、声を上げる住民は意図的に協議の過程から排除されている。なので、協議の実際の参加者は、政府の手先の者ではないかという疑いがある。
Mirza (2022)から抜粋
(翻訳・山本健太朗)
©︎ 2022 The Climate Justice Project