
環境後進国・日本から気候正義を実現する
清野華那
こんにちは。Fridays For Future SendaiとFridays For Future Japan「マイノリティから考える気候正義プロジェクト」で活動している清野華那です。
マタバリ石炭火力発電事業
私は、昨年からマタバリ石炭火力発電事業に反対する活動に取り組んできました。住友商事とJICA(国際協力機構)がバングラデシュで進めているこの事業は、1・2号機の建設のために2万人の住居や職を奪いました。また、稼働してしまえば、1・2号機によって引き起こされる大気汚染のために、1万4000人の命が奪われると言われています。
私がマタバリ石炭火力発電事業の問題に取り組むのは、人々が暮らしや命を奪われること、そして日本の企業と政府がそのような問題を引き起こしていることが許せないからです。
これまで、バングラデシュを始めとする世界のオーガナイザーと連携を図りながら、この問題に取り組み、拡張事業(3・4号機)を中止させるという成果を得ました。今後、COPのような国際的な場でアクションをすることを通して、1・2号機も中止に追い込みたいです。
責任と被害の不平等
さて、MAPAの活動家たちは、MAPAへの「気候賠償」の必要性を訴えています。なぜ「支援」ではなく、「賠償」なのでしょうか。
※MAPA:最も被害を受ける地域と人々。例えば、アジア・アフリカ地域に住む人々や、先住民のようなマイノリティなど。
それは、これまで二酸化炭素を大量に排出し、「豊かな」生活を築き上げ、気候変動を引き起こしてきたのが「先進国」だからです。排出量にほとんど責任がないMAPAには、気候変動の被害だけが押し付けられています。
当然、日本は気候変動に大きな責任を負っています。それは、日本が世界で5番目に多い二酸化炭素を排出しているだけではなく、世界中、とりわけアジアで深刻な環境破壊と人権侵害を引き起こしてきたからです。マタバリ石炭火力発電事業も、このような問題の一つです。
気候変動問題の中でMAPAが注目され、話題に上るようになってきました。今年のパキスタンの洪水被害のように、被害の実態がようやく日本でも報道されつつあります。被害を最も受ける人々に目が向けられるようになったのは、大きな一歩です。
「声を聞く」から「一緒に声を上げる」へ
しかし、「被害者」に目が向けられる一方で、気候変動の「加害者」の問題はあまり語られないように思います。気候変動を引き起こしているのは「人類」一般ではなく、「先進国」の大企業や一部の富裕層の経済活動であることは明らかです。
MAPAの人々は、弾圧を受け、不当に逮捕されたり、時には死傷者を出しながらも、「加害者」を問題にし抵抗しています。MAPAは「声なき存在」「かわいそうな被害者」ではありません。最前線で地球を守っているにもかかわらず、「先進国」の私たちが彼ら・彼女らを無視し続けてきただけなのです。
私たちが住友商事やJICAのような日本企業・日本政府を野放しにし続ければ、MAPAの暮らしや環境は破壊され、地球は取り返しのつかない状況になってしまうでしょう。加速する気候変動を食い止めるには、被害の現実を告発するだけに留まらず、日本を始めとする「先進国」の企業や政府による環境破壊とMAPAへの暴力を止めるしかありません。
それこそが、文字通り命懸けで声を上げ、システムの大きな変化を求めるMAPAの人々と共にあるということだと思います。


写真上:バングラデシュの活動の様子 写真下:仙台の活動の様子
気候正義を勝ち取れ!
COP現地、シャルム・エル・シェイクでは、海外のオーガナイザーと一緒に声を上げ、日本の「援助」事業を国際的に問題にします。また、日本ではあまり報道されていないMAPAの被害や、日本企業が行っている事業の実態などをインタビューし、独自に発信していきます。そして、帰国後も、MAPAと一緒に闘う運動を大きくしていきたいです。
環境破壊や人権侵害を厭わない、利益追求の論理に抵抗していくには、私たちが大きな力になる必要があります。気候変動やグローバルな格差・貧困などの問題に関心がある方は、一緒に声を上げましょう。そしてこの世界的な不平等に終止符を打ち、気候正義を実現させましょう。